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SULF 2 - 零細漁民のための持続可能な生活向上プログラム第2期
はじめに
インドネシアのバリ島は、この20年間で観光開発が急速に進み、現在も経済発展が続いています。
しかしその一方で、島民の所得格差の拡大が顕著となってきており、
経済発展の恩恵にあずかることができない人々が数多くいるのも事実です。
開発に取り残された人々の中には、昔から伝統的に漁業を行ってきた零細漁民も多く、
彼らの生活は相変わらず困窮を極めているのが現状です。
バリ島南東部に位置するセランガン地区には、零細漁民とその家族約3,000人が住んでおり、
5つのヒンズー・コミュニティーと1つのムスリム・コミュニティーを形成しています。
セランガン地区の零細漁民は、観光開発にともない漁場の縮小や漁獲量の減少から廃業に追い込まれるものも多く、
家計を支える収入の確保と安定化および生活向上が地域の大きな課題となっていました。
All Life Line Netでは、何とかして彼ら零細漁民の生活の経済的安定と生活向上に貢献することはできないだろうかと、
学生会員を現地へ派遣し、現状調査を行うとともに課題解決に取り組むことにしました。
その結果、セランガン島の沖に広がる素晴らしいラグーンに着目し、
海畑(つまり海藻養殖)を作ることができるのでは?と考えました。
そして、約1年の準備期間をもうけ、プロジェクトの内容を検討し、実行に移しました。

セランガン島における成果
10人のコミュニティーリーダーをプロジェクトの中核にすえ、養殖事業を展開しています。

光を、スンバワでも
本プロジェクトも2年目を迎えました。 2年次では、バリ州のスランガン・サイトに加え、西テンガラ州のスンバワ島にサイトを広げました。 セランガンでの海藻養殖の支援を継続するとともに、 より生活環境の厳しいスンバワ島の零細漁民への支援を開始しました。 スンバワ島には、フローレス島などから出稼ぎにきて、 テント生活をしながら潜水による海藻(ホンダワラなど)採取を行っている人々もいます。
スンバワ島では、プロジェクトのコアメンバーを対象にキリンサイ養殖のセミナーを行いました。 このセミナーでは、養殖の方法や養殖場管理のポイント等の基礎的な説明を行い、 キリンサイ養殖の概要を理解してもらうとともにさらに、 インドネシアや隣国マレーシアの事例紹介も動画を用いて行いました。 参加者は興味深げにプロジェクターのスクリーンに見入っており、 モチベーションの向上がはかられました。
キリンサイの養殖を始めるには、まず種苗(100g前後の藻体)が必要になります。 スンバワ島で十分な量の種苗を集めるところから始めなければなりません。 当初はバリから輸送することを検討しましたがコストがかさみます。 幸い現地のコミュニティーの方々や地方水産技官の情報提供、口コミによる協力により、 何とか200kg以上の種苗を確保することができました。

バリ州のセランガン島では、筏による養殖を導入しましたが、 ここスンバワでは生産コストを最小限におさえるために、 海中に長いロープをはる「ロングライン方式」を計画しました。 スンバワは、晴天でも急に風が強くなることがあり、キリンサイ養殖には注意を要します。 せっかく育てた海藻が強い波と風に流されては、参加者の気持ちもめげてしまいます。 そうならないよう、プロジェクトでは風対策を検討中です。
今後の展開
キリンサイは、寒天に似た粘質多糖類のカラギーナンを含んでいて、さまざまな用途があります。
アイスクリームの粘性素材、ミルクコーヒーの安定剤から乳製品やビール、化粧品、
ペットフード、歯磨き粉、パソコンのプリンターインク等の製造に欠かせないものとして注目されています。
また、タピオカで作る「クルポ」というエビセンのようなものはインドネシアの食事に必ず添えられま
すが、近年、キリンサイを使って作れることが分かってきました。
値段の高いタピオカを使わず、安いキリンサイで「クルポ」を作ることが、インドネシア中に広がっていけば……。
スンバワ島は、気候の関係からタマネギ栽培のほかに特に産業もなく、人々の収入源は非常に限られています。 今後もAll Life Line Netは、海藻養殖の普及を通じ、地元の人々の生活改善に貢献していきたいと考えています。
